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物語が生まれる場所。

月夜に綴る物語。

スケアクロウの物語

空が青い。所々雲が泳いでる。
高い建物なんてないから、遠くの空までよく見える。 

肩に雀が止まってる。
「今年もうまそうな米ができたなぁ。ちょっと味見を…」 

こらっ!
声を上げたのは僕ではない。 
カラスだ。こらっ!ではなく、かぁっ!だったかもしれない。 

どちらにせよ、驚いた雀は遠くの空へ飛んで行った。

僕には声がない。案山子だから。 
ありがとうも言えない。 

カラスは退屈そうにあくびをした。
「なぁ案山子よ、おめぇホントはしゃべれるんじゃねぇか?」 

…。

「おめぇがしゃべれねぇって勝手に決めつけてるだけでよ、ホントはしゃべれるかもしれねぇじゃねぇか。試してみたのか?」

…当たり前だ。何度も、何度も試してみたさ。でも、やっぱり僕には声が無かった。

声帯っていうのは凄く特殊な作りなのか、人間は僕を作る際に、声を作れなかった。いや、作らなかったのかもしれない。しゃべる案山子っていうのは、凄く薄気味悪いものだ。 それに情が湧いたら厄介だ。

無口で無機質。
そうでなければ、あんな広い場所に1人ポツンと置いておけない。

そんな事を考えていると、カラスが急に飛び立った。しゃべらない僕に愛想を尽かしたのだろう。

僕はまた1人、目に見える景色を当たり前に眺めながら、ただ立っていた。

次の日の明け方、カラスが戻ってきた。
くちばしに何か加えている。 
枯葉のようだ。 

「ほらよ、口だ。これがあればおめぇもしゃべれるだろう。色々探したけど、これが1番おめぇに似合う。さぁ、これをつけて…と。」
カラスは枯葉を案山子の口元につけ、ワクワクした顔で僕の言葉を待っている。 

ありがとう。…ごめんよ。

カラスは少し哀しい目をした後、「そういえばさっき雀がな…」といつも通りたわいもない話を笑顔で話し始めた。

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